スーパーエルニーニョと温暖化で今年の夏は?
今年も夏が迫るにつれて、観測史上最強クラスのエルニーニョ現象が発生する可能性が高まっています。赤道太平洋の海面水温が一時的に上昇するこの自然現象によって、世界平均気温が観測史上最高を記録するのはほぼ確実と考えられています。 前回(2015年)のスーパーエルニーニョ現象発生時の海面水温偏差。左は2015年1月1日、右は2025年11月1日時点の海面水温を元に作成。今回のエルニーニョはこれを超える可能性があると指摘しています。
NASA Earth Observatory maps by Michala Garrison, data from the MUR SST
エルニーニョ現象って何?
エルニーニョ現象は、赤道太平洋の中央部と東部の海面水温が低温期と高温期の間で周期的に変動する「エルニーニョ・南方振動(El Niño-Southern Oscillation: ENSO=エンソ)」と呼ばれる気候パターンの高温期にあたります。低温期は、ラニーニャ現象と呼ばれます。
米海洋大気庁(NOAA)によるとこの周期は不規則で、エルニーニョとラニーニャは平均すると2年から7年に一度のペースで発生しています。
ENSOは、年単位の自然な気候変動としては地球上で最大規模。
このサイクルが大気循環を変化させ、その結果として世界中の気温や降水量に影響を及ぼします。
エルニーニョ発生中は、赤道太平洋の中央部と東部(ペルー沖)の海面水温が平年を上回り、余剰熱が大気中に放出されるとともに、太平洋ジェット気(太平洋上空を流れる強い偏西風)が南へシフトします。
その結果、地球全体の気温が上昇し、世界各地の気象パターンがズレてきます。多くの地域で温暖化によって極端な気象現象を、エルニーニョがさらに悪化させています。
NOAAの上級科学者であるマクファーデン氏は、「陸地の猛暑は致命的で、公衆衛生にとって重大な脅威になっています。また、暴風雨は激化し、極端な干ばつも増えています。これらの事象は、特定の時期にエルニーニョと気候変動が重なったために発生しています」と説明しています。
エルニーニョと温暖化の関係は?
現在、エルニーニョは人間活動による気候変動のベースの上に発生しています。この2つの現象の関係はかなり複雑(エルニーニョだけでも超複雑なんです)で、互いがどう影響しあっているのかを解明しようと、専門家がずっと努力を続けています。
ただ、近年は、温室効果ガス濃度上昇による温暖化にエルニーニョが拍車をかけて、地球の平均気温を未踏の領域に押し上げる一因になり得ることが明らかになってきました。
人類がこのまま大気中に二酸化炭素を排出し続ける限り、エルニーニョの影響はさらに深刻化し、周期的に訪れる気温の急上昇のあと、気候がエルニーニョ発生前の状態に回復するのはますます困難になると思われます。
では、こういった状況が具体的に何を意味するのか、そして極端に強いエルニーニョがただでさえ急速に温暖化している世界にどんな影響を与える可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。
相乗的な効果が…
2023年に発生した強いエルニーニョは、2024年を観測史上もっとも暑い年に押し上げる大きな要因になりました。2025年に発生したラニーニャの影響で世界平均気温はある程度下がりましたが、エルニーニョ発生前の水準には戻りませんでした。
それどころか、2025年は2023年(観測史上2位)と2024年(観測史上最高)に次ぐ観測史上3番目に暑い年になりました。
これは 大気中の累積的な温室効果ガスが増加したことで、ラニーニャが持つ地球規模の冷却効果を相殺してしまったためだと説明できます。
このような力学は、地域規模の気象パターンにも影響を与えています。インペリアル・カレッジ・ロンドンの気候科学教授のフリーデリケ・オットー氏
今年初めのまだラニーニャ現象が続いていた時期に、オーストラリアで大規模な熱波が発生しました。通常、ラニーニャが発生すると、オーストラリアは涼しくなるはずなんです。つまり、人為的な影響がラニーニャの効果を相殺してしまったのです。
この傾向は、過去の気温データにも表れています。マクファーデン氏は、「21世紀におけるラニーニャの年は、温室効果ガスの蓄積が原因で、20世紀のエルニーニョの年よりも暖かくなっている」と述べています。
温暖化の影響で、21世紀の涼しいラニーニャの年が、20世紀の暑いエルニーニョの年よりも暑くなってしまったとの説明です。
アメリカ大気研究センターの特別研究員であるケビン・トレンバース氏は、2023年のThe Conversation寄稿のなかで、地球温暖化はENSOの変動に大きく左右されながら、階段状に進行すると説明しています。
通常、気温を上昇させるエルニーニョのあとに、気温を下げるラニーニャが続きますが、大気中の温室効果ガス濃度が上昇の一途をたどっているため、長期的に見た正味の効果としては、やはり依然として温暖化傾向になっています。
もっとも極端なモデルの予測によると、今回のエルニーニョは2023年よりもさらに強力になる可能性があります。
専門家は口をそろえて、2026年と2027年の世界平均気温は、スーパーエルニーニョによって、産業革命前の水準から1.5℃以上上昇する可能性があるとの見解を示しました。1.5℃は、気候変動の最悪の影響を避けるためにパリ協定で設けられた目標値です。
非常に強いエルニーニョが発生した場合、世界平均気温の上昇が、今後産業革命前の水準から1.5℃を下回ることがあったとしても、ごくまれにしか起こらないレベルに追い込まれる可能性があります 。 1.5℃の防衛ラインは、風前のともしび感がありますね。
温暖化でスーパーエルニーニョは増える?
エルニーニョが世界平均気温を上昇させるのは明らかなのですが、その逆、つまり温暖化がエルニーニョに影響を与えているかどうかは、依然としてハッキリわかっていません。 とはいえ、人間活動(主に化石燃料の燃焼による温室効果ガスの排出)に起因する気候変動が、強力なエルニーニョの発生頻度を高めている可能性を示唆する証拠もいくつか出てきています。
気象学者は、 エルニーニョは発生頻度が低いため、現時点の観測データから統計的に有意なサンプルサイズを得るのは不可能です。しかし、数字を見ると、過去40年から50年間で、それ以前よりも極端なエルニーニョ現象が増加している可能性が示されています。これは、今世紀に極端なエルニーニョが増加するというモデルに基づく予測とも一致します。
もし今年のエルニーニョが本当に非常に強いもの(ニーニョ3.4海域の海面水温偏差が平年の+2.0℃以上=スーパーエルニーニョ)になれば、それは異例の事態です。なぜなら、前回の非常に強いエルニーニョは、わずか10年前に発生したばかりだからです。通常であれば、非常に強いエルニーニョが発生する頻度は、15年から20年に一度です。
温暖化が進む世界でスーパーエルニーニョの発生頻度が高くなっているのだとしたら、それは地球の気候システムにおけるエルニーニョの役割と関係しているからかもしれません。
ENSOサイクルにおけるエルニーニョの時期は、赤道太平洋域に蓄積された余剰熱を大気中に放出するメカニズムとして機能しています。
そして、地球の大気が温暖化するにつれて、海洋はより多くの熱を吸収して蓄える(大気の余剰熱の90%以上を海洋が吸収)ため、エルニーニョ発生中により多くの熱が放出されるわけです。40℃のお風呂よりも、沸騰したお湯の方が周囲の空気は暖かいですもんね。
つまり、温暖化によって強いエルニーニョの発生頻度が高くなると、それによって放出される熱が温暖化の短期的な影響を増幅させてしまうという、大変よろしくないフィードバックのループになっていることを示唆しています。温暖化って、こういうマイナスの相乗効果が多すぎ。
エルニーニョとラニーニャによる極端な気象災害は、地球規模で弱い立場の人々に不均衡な影響をもたらします。温暖化とエルニーニョの複雑な関係の謎解きは、暑くなり続ける世界を理解するうえで、極めて重要な取り組みになりそうです。
緑を管理する我々も、天候に左右され自然に寄り添う仕事です。その為地球環境に悪い事はしたくないと考えるし(芝生はゆっくり育てて刈り込み頻度を下げる事を考える?)寄り添う為に少しずつ順応し変えてゆかなければならないと、この記事を読んで考えさせられます。

