農薬の考え方
世界で一番農薬を使用している国が日本です。雨に恵まれ高温多湿の国ですのでしかたがないのでしょうか?
農薬使用では予防と治療散布に分けられますが、常に農薬を使用する事により作用性に対する感受性を低下促進させ、病原体の強い個体を作り出してしまいます。医療現場における抗生物質耐性の問題にも類似しており、繰り返し又は不適切な使用は、耐性に繋がります。
農薬は毎年新商品が発売されています。その中で成分名を見て下さい。すると決して新しい成分だけではないのです。農薬の商品名を知っている方が良いのですが、作用機構・系統名・分類などを覚えていればもっと有効に効果的に使用できます。そこで知っていてほしいのが下のHPです。
殺菌剤  FRACFungicide Resistance Action Committee
殺虫剤  IRACInsect Resistance Action Committee
除草剤  HRACHerbicide Resistance Action Committee
農薬工業会が分類系統をはっきりさせて耐性菌が付きやすい農薬や分類をおこなっています。 芝生用ではないので商品名ではなく成分名を見て下さい。

殺菌剤の基礎知識 】
殺菌剤には分類以外に作用機構にも大きくわけて2つのタイプがあります。
・接触型(作用点接触化合物)
・浸透移行型
それではもう少し詳しく説明します。
接触型…ダコグリーン・プロテクメイト・ドウグリン・カシマン・他FRACコードMの系統
芝草の葉身の表面に保護膜を形成し、胞子がらの発芽、菌糸の進入を阻害します。
植物体内に浸透しないので、進入してしまった菌糸を殺菌する事は出来ません。
浸透移行型(上記以外)
植物体内に浸透し、植物体内に侵入した菌糸を殺す
局所浸透型(浸達型)…Qoi剤 ストロビルリン系 ターフトップ・オナー・ヘリテージ・レキシコン等
求頂浸透型    …EBI剤 ポリオキシン他
全身移行型(真の浸透移行型)…ホセチル
どうやって植物体内に浸透するかというと→気孔から浸透
クチクラ層を破壊して浸透→皮を剥がされて紫外線に被爆する=薬害を起こすのと同じなので菌糸も侵入しやすくなる。
できるだけ農薬は散布しない方が良いと言う事です。

水量は重要!
希釈倍率が薄くなると、接触型の殺菌剤効果が下がる
散布水量が多くなると、浸透移行型の吸収(浸透)効率が下がる

殺菌剤を散布すると良い菌も悪い菌も殺菌する=土壌散布(多水量散布)は微生物層を崩壊させる。
・絶対量の多い、炭疽・細菌が優勢になる
・微生物と拮抗している苔も増えやすくなる
・サッチが分解されにくくなる→病害発生リスク増、ボールマークが増える

知っている様で知らない話!
チウラムという殺菌剤は古くから使われていますが、化学原料的に見ると、硫黄が原料で主にタイヤ等のゴム製品の加硫促進剤として使われています。ゴルフ場の定番ダコグリーンは夏場や高温時に薬害が出る原因はチウラム(硫黄)によりでベントが焼けてしまうからなのです。
高温時期の藻退治は注意して下さい。硫黄Sが入っていると独特の匂いもするはずです。肥料として硫黄補給にもなるので芝生がシャキッとする事も!

【ダラースポット・炭疽病・細菌病の防除】
・病害が発生=色が変わり病斑が確認される=菌糸が侵入している時は浸透移行型で侵入した菌糸を殺菌する。最終手段は抗生物質
・接触型で、菌糸が侵入してこないようにマスキングする
 ダラー、細菌の侵入リスクを下げるのが目的なら20~50㏄/㎡散布
 炭疽病の侵入リスクも下げる必要がある時期は 80~100㏄/㎡散布   100㏄/㎡以下の散布 であれば藻類の発生リスクも下げる事ができる。
 殺菌剤の散布間隔は芝生の刈取り量に影響されます。
・肥料も農薬も刈込による収奪される
・ベントの刈取り量が1ℓ/100㎡で7日間の殺菌剤の持続効果は期待できる。肥料や農薬も刈取り量が多くなると殺菌剤の持続期間は短くなる。
・少しずつ伸ばして、少しづつ刈り取ると、殺菌剤の散布間隔を長くできる。
・刈取り増はベントグラスのストレスを増やし菌糸による侵入されやすくなる。

植物に良い殺菌剤!
ヒドロキシイソキサゾールは殺菌剤でもあり植物成長調整剤でもあるユニークな剤です。水稲の育苗場面を中心に苗立枯病を防除するとともに、発根および生育を促進するなどの作用により、健苗を育成する。もちろん芝生も同じです。根を伸ばしたい時期に役立ちます。

【フェアリーリングの防除】
・担子菌類の予防・治療は農薬じゃありませんがマックスウォッシュ1㏄+ストリーム1㏄をに使用して下さい。潅注により効果が高くなります。
・ほとんどのフェアリーリングはQol剤で防除できるが一部では効果が無い事もある。その場合はDMI剤が効く。
・気温と共にフェアリーリングの原因菌の深さが変わります。夏場には深くなりますので、層に届く様に浸透剤ストリームを混合した方が効果が高い。

【殺菌剤の基礎知識】
接触型はマスクなので菌糸の侵入を防ぎ、浸透移行型は内服薬なので侵入した菌糸を殺菌する。
シグネイチャー(ホセチル)は栄養剤ピシウムの登録はあるが、ピシウムを殺菌する力は極めて低い。
芝の体力をアップして、発病しにくくする。同じ様に細菌、炭疽の発病も予防する。
マスクは口につける!
高濃度少量で、菌の侵入してくる茎葉をマスキングする。
内服薬は発病してから飲んだ方が良い!
風邪をひかないようにクスリを飲むよりマスクした方が良い。
内服薬は、菌糸がいる場所に、効率的に浸透移行させるべきなので、せいぜい100~200㏄散布
※少しずつ伸ばして少しずつ刈り取るようにすれば、多作用点接触化合物殺菌剤(ダコ・プロテク・ドウグリンの金属系)の100倍液を50~100㏄で7日~10日の1回散布していればダラー、炭疽、細菌はあまり問題にならないし、100㏄以下で散布すれば藻も発生しにくい。

ホセチルアルミニウム?
有機リン系の殺菌剤。胞子の発芽抑制による病原菌の植物体への侵入を阻害し、植物体への生理作用の介在によって植物体の細胞壁を強化する等の病原菌 に対する植物の抵抗性を強化すると考えられています。 亜リン酸は植物体に吸収され体内を移動する特徴があり、葉に散布した物が根の病害に対し防除効果を示します。また抵抗性誘導作用によって病害を軽減する効果もある。ホセチルは殺菌剤の中で最もpHが低い=植物体内に吸収しやすい性質がある。吸収率が良いので他の殺菌剤との混合をしても効果が高いのです。昔はマンゼブ混合した商品がありました。(藻剤のゴーレット)また亜リン酸なので肥料にもなります。これぞベントが弱る高温時期に使用する一石二鳥の栄養剤です。

日本では完全無農薬管理はコストも高くなり難しい気象条件です。真冬の3ヵ月なら問題ありませんが!
農薬の知識を持った上で使用する事で、減農薬に繋がると考えます。
農薬を使用するということのリスクとデメリットを理解し、より良い芝生管理を行って下さい。減農薬減肥料はSDGSです。