日本式コースメンテナンス 】
我が国は高温、多湿の気候という特別の気候風土を持つ国です。雨量も年間1,200mm~3,000mmと雨が多い国であり夏場は高温多湿です。その風土の中で、寒地型芝草であるグリーン(クリーピングベントグラス)を年間を通して維持・管理を行うには、あまりにも過酷な条件であり、メンテナンスを行う事の難しさを考え直す時です。更に温暖化による天候不順など日本も極端な乾燥や豪雨など亜熱帯化しつつあります。寒地型芝生の生育を欧米の真似では無く、日本の気候や土壌の特徴を理解し取り入れ、ゴルフコースメンテナンスに生かし、後継者に繋いで行かなければならない時期にきています。

肥料の考え方 まずは基本から! しば子先生のミニ芝生教室で基本を学習して下さい。何事もすべては基本から始まります。水と空気と太陽から!

散水栓を分岐させて2人作業で効率化

植物は!水が無いと肥料は吸収しない! 】
 肥料はイオンの形でしか芝生に吸収されません。人間の体内水分が60%と言われている様に植物も水分を根や葉から体内に取り込み光合成を行います。芝生体内の水分率も50%程度です。
 春先にベントグリーンが動ぎ始めますが、霜が降りる時期にもグリーンの乾燥箇所がわかります。霜の降り方がまばらな時には、土壌が乾燥している事が目でみてわかる時期です。一見雨や散水は均一に水が掛かっている様に見えても、土壌中での水の動きは均一ではありません。これをわかりやすく説明してくれる動画を見て下さい。均一に水は流れない事がわかります。試験では表面に芝生やサッチ層はありませんので、実際のフィールドではもっと不均一な水の流れとります。春先の乾燥はベントグラスに致命的なダメージを与えるわけではありません。この時期に土壌洗浄剤マックスウォッシュS+浸透剤ストリームを使い土壌中に水が均一に入る様な状態を整えて下さい。2次乾燥時期である5月の田植え時期までに トライ&エラーを繰り返し土壌中の水分を均一化して下さい。春先のエアレーションの穴の開いた箇所に、マックスウォッシュS+ストリームを散布して後散水の水圧でエアレーション穴を完全に開けてます。このひと手間の作業が後に絶大な効果を上げます。担子菌類の防除に役立つ作業です。乾燥箇所には水が必要です!梅雨までに土壌水分を均一化して高温期に備えて下さい。

【春先の考え方】
 環境の準備が整い芝生が動き始めます。春先は芝生本来の養分によりスプリングフラッシュします。ゴルフ場の入場者数数が5万人以上のコースだと、この時期に擦り切れが目立つ場合には少量の施肥をお勧めしますが、擦り切れの問題が無ければ春先早くの施肥を控えてスロースターターで行きましょう。ベント内にカタビラが入っているグリーンではなおさらです。 休眠打破はカタビラの方がベントより早く、動きだしも早いので、早春の肥料はカタビラのエサとなり増殖させてしまいます。この時期に肥料をガンガン与えると色も芝生の伸びもよくなりますが、根は伸びにくくなります。(栄養成長)何故でしょう?答えは簡単。少子化問題の日本は個人個人の豊かさを求める為に自分に金を使います。昭和以前の日本や発展途上国のあまり豊ではない国では子だくさんだし人工増加が止まりません。豊でない方が親は自分の為では無く、子供の為に働き子孫繁栄に向かうのです。芝生も同じと考えると、肥料が少し足りない位が良いのです。ベントグラスの親株は1年半から2年程度生きます。老人が多いグリーンより若者や子供が多い方が夏場に向けて安心です。(生殖成長)肥料を与えすぎると芝生が伸びるだけでなく、土壌中の養分も損失します。芝生の刈粕を出す事のメリットは全くなく、産業廃棄物を増やすだけです。逆に芝生を伸ばさないメリットの方が多いと考えます。(刈込作業が楽・グリーンモアの損失が少ない・肥料、農薬が少なくて済む・踏圧に強い・天候ストレスに左右されにくい・パッティングクゥオリティーが午前と午後の差が少ない・等)

師匠の教え・大井上康の栄養周期理論(巨峰を品種改良で誕生させた人)
幼少期(栄養成長)思春期(転換期)大人(生殖期)人間と同じと考えると、急に転換期がくるわけではなく思春期は大人になったり子供になったりと少しずつ変っていく

 肥料の種類とバランス
植物全般に言える事ですが生育ステージにより必要な栄養素と必要量は異なってきます。
種子から育ってだんだん葉を伸ばし、日が経つにつれ下等なものからだんだん高等なものえと進んでいく。発育とは生物の進化・進歩であるので、いつでも同じ状態に留まっているのではなく、時間が経つにつれて次々と新しい状態に進んでいく。これは人間の一生に比べてみても大した相違はない。子供時代は外部から吸収した養分を同化して 自分の体を作り上げる時代であり、 これを栄養成長期と呼ぶ。体が一人前になると成長は自然と衰えてきて、ついには止まってしまう。今度は子供を作るという別の仕事を始めるようになる。成熟した生物の仕事は生殖となりこれを生殖成長期と呼ぶ。昨日まで子供であったのがこつ然と大人になるというものでもない。人間で言う思春期。子供の体の中に大人になる芽生えが出来始め生殖能力が出来始める時期を交代期という。ベントグリーンでもこのような状態を繰り返し、正しい育て方をすれば子供が多い=芽数が多いしっかりとしたグリーンが出来ます。

【春は縦根・秋は横根】
 春先のベントグリーンの管理は我慢が必要です。見守る事が大切ですので観察して下さい。人を育てる事も同じです。
4月の気温の上昇と共に徐々に土壌中に残っている養分を吸収してきます。ここで苦土石灰を土壌に散布してみてください。
土壌中に残存しているアンモニアが追い出され、窒素を散布しなくても芝生が吸収し色が出て来ます。
春は縦根を作りますが、必要以上に長い根は必要ありません。根を伸ばすには加里が必要ですが、5月に塩化カリを施用して更にアンモニアを追い出しカリに置き換えます。塩化カリが根を伸ばす役割をします。これで夏の準備が整います。※横根→縦根→葉の順番 一度に作ろうとすると上手くいかない。
塩化カリはタバコの葉を育てる時に使われます。葉が固くなり綺麗に燃えるという話を農家さんに聞いた事があります。
リン酸は根を伸ばすと言われますが、根を伸ばすのはカリの仕事で、リン酸は分げつ、発根、出穂、結実などに使われます。
塩基飽和度を上げてアンモニアを追い出せば、梅雨から夏にかけて起こる硝酸爆発が減ります。

ベントは秋から作ると言われているが、梅雨からの準備が秋のスタートダッシュに役立つ=夏越しが良いグリーンは秋も良いグリーン!

根の数を多くするには?
茎を太くする事=炭水化物貯蔵量を増やす。
根の本数は最大にすると15本出来る(下に伸びる根が7本・横に出る根が7~8本)
この横根が出来るほどグリーンが硬くなる。エアレーション時期の目安は,根が5~8センチ程度伸びた事を確認した後に行うと、しっかりした根により、芝生を持ち上げにくくなる為エアレーションによるダメージが少なく、穴の埋まりも早いので2週間で元に戻ります。
グリーンは上で作らず、下で作る。上で作るとは、肥料でいつもコントロールして作り、肥料で芝生を育てて刈り込み、サッチング等の作業を繰り返し表面を作って刈高でボールを転がす。肥料のタイミングや異常気象の状況では管理が難しくコストも高くない。一方下で作る方法は、盤をしっかりとさせて、面を作り、そこに芝生が生えている状況を作る。芝生は自然の力で育てるので、環境の変化には対応しやすい。 根が無いから茎が伸びる。根があると茎は伸びず葉のみが伸びる。 根で養分が求められないから、生きる為に茎を伸ばす。(オーキシン作用 )
浅い根に対して深すぎるエアレーションは注意が必要です。エアレーション前に根と茎を見る事はとても大切です。
ベントは1年に5回芽を吹く(分げつ) 栄養成長→交代期→生殖成長の切り替わりが上手い=腕の良しあしはこの辺かも!

4月のグリーンは黄色くて良い
窒素が多くて、青いグリーンは見た目は良いが、この時期はそんなに光合成が旺盛ではない。
上を伸ばすのに、貯蔵養分消費が増えると、縦根を伸ばす貯蔵養分が不足する。
青くするのは、光合成が旺盛になって、貯蔵養分消費が、マイナスにならない時期に入ってからなので、5月まで我慢。
色が欲しい時はこの時期鉄か着色剤で色を出せばOK。

上は5月まで我慢する
茎の付け根、根の生え際に膨らみと、張りが戻る、もう一つの見方として葉が光って来たら窒素を増やす。肥料は下葉の色を見ながら与える。
すぐ切れてしまうので5月だけは我慢して、1週間に1回施用して夏を乗り切る栄養と根をつくる。

6月梅雨…ベントグリーンの管理
ベントグラス(寒地型芝生)厳しい季節となります。 濡れの生態学の本の中に雨によるリーチング (leaching) 植物体からの物質の流亡 ‥強い雨がふると葉の表面のパラフィン層がこわされてしまい、雨と共に養分が流亡し、蒸散が増えてしまう 。とあります。雨が多くなると光合成が低下して同化のスピードが落ちます。 食べ過ぎて消化不良になる季節に入り病気の発生要因にもなりますので注意が必要な時期です。最近の気象状況は6月に何度も夏日があり湿度も高くなりますので夏の入りと考えられます。梅雨が最近短くはっきりしない為に気象庁も梅雨開け宣言しない事もありますので、空を読むことも仕事のひとつです。

窒素 ベントグラスは光合成で作った炭水化物を利用して、窒素を同化し、葉・茎・根などの植物体を作ります。光合成が十分に実施できない(お日様が出ない)天候下では光合成により造られる炭水化物の量が減少し、吸収した窒素をうまく同化する事ができません。窒素の吸収には、あまり大きなエネルギー必要としませんので、過剰に施用された窒素はベントグラスの体内に入り込みますが、同化できない状態に陥ります。
人間で言うと「食べ過ぎて消化不良」の状態ですので病気の発生要因となります。窒素目標値は4.0-4.5%程度で十分です。入梅に向けて窒素施用量を絞り始めてください。6月の最大窒素施容量は1g/㎡未満に収め、状態によってはさらに減らしてください。窒素4.0-4.5%で、その他の成分が目標数値を満たしていれば、刈取量は100㎡当たり1.0-1.5L程度になるはずです。

リン酸 ベントグラス体内のエネルギー代謝に重要な養分です。不足すると代謝不良・カロリー不足により、分ゲツが不良と細根の活性低下に陥り、芽数があがらない状況に陥ります。リン酸が効率よく吸収されることで、7月8月でも分げつと新根の発根が確認できます。このことは8月の芽数減少を予防する事にも貢献します。

カルシウム・苦土・カリ 晴れが少ない天候が続くと、葉身分析の窒素比が高くなり、その他の成分比が低くなる傾向があり、このような状態は徒長の原因になります。 5月の下旬に徒長気味の生育を呈しているベントグラスは、その他の成分のうち、特にカルシウムとリン酸が不足しているケースが多いです。農業分野においては、この時期カルシウム、もしくは苦土の施用量を増すことで徒長を抑制する農家の方も大勢います。土壌の塩基バランスを考慮して不足するものを補う。各成分が土壌内には多くあるのに、葉身分析に結果に反映されないような場合、軽い更新作業(スパイキング、無垢、十字エアレーション)、腐植酸、有機酸(クエン酸など)の施用で土壌内に残留している成分を溶かしてベントグラスに吸収させる方法は有効です。 日本で一番必要な事はカルシウムの吸収率を上げいかに利用できるかが大切です。Mg:Ca比は5倍~7倍が理想的。3元素(N・P・K)ではなくて5元素(Mg・Ca)迄考えないと日本の植物は上手に育たない。

ベントグラスに各成分を施用した場合の葉の反応(イメージ)
カルシウム → バリバリする
苦   土 → ムッチリする(葉が厚くなる)
カ   リ → シャリシャリする
各塩基が不足すると逆の状態に陥りますので徒長抑制の指針としてください。 タバコ農家では硬く火の付きが良い葉にするために塩化カリを使用する。

【梅雨から夏の考え方】
マグネシウム(もしくはカルシウム)とリン酸の葉面施用(小水量散布:50~80㏄噴霧散布)を強化し窒素施用量を絞る事で、軟弱徒長を抑制し8月の生育停止(停滞)期に向けてエネルギーの浪費を防ぎ(葉身中のリン酸濃度低下を抑える)、光合成により作られた養分を蓄積させる管理をします。梅雨時期から夏には硝酸爆発が起こり始めます。(硝酸爆発とは地温の上昇と散水や降雨と共に、土壌中の養分であるアンモニア態窒素は土壌中の硝化菌が亜硝酸態窒素から硝酸態窒素へと変えていきます。硝酸態窒素は水と共に強制的に芝生体内に吸収され軟弱徒長現象が起きる)サマーディクライン・ウエットウィルド 等の原因。前年秋に施肥した窒素が夏前までアンモニア態で土壌吸着して残り、高温多湿により硝酸化菌が活躍し始め硝酸態窒素の硝化が進捗する。硝酸態窒素が水と一緒に大量に芝生体内に吸収されて刈カス量も爆発的に増加する。刈カスが増えると肥料農薬の収奪量が増える事で 肥料農薬のコストがかさみ、芝生のストレスも増大する。この時期は寒地型芝生のベントにとっては停滞期なので少しゆっくりさせてあげて下さい。
硝酸態を芝生体内に吸収したら、タンパク質に同化しないと意味がありません。硝酸態窒素→アンモニア態窒素→アミノ酸→タンパク質=根、茎、葉を作ります。この時 アンモニア態窒素→アミノ酸の同化には、炭水化物が取り出した糖が必要となります。夏場は太陽が強すぎる為に光合成による炭水化物生産量が不足するので、貯蔵養分を切り崩して体を守ります。
炭水化物量が低下=病気にかかりやすい=殺菌剤コスト増となる。しっかり吸った養分はしっかり同化しないと病気も治りにくくなります。
夏場の窒素は寒地型芝には不利益が多く、暖地型芝には有益である。グリーンに雑草が出る場合は、この余分な窒素がメヒシバ・ヒメクグの生育を助長してしまい防除コストも上がる。秋以降にカタビラが増えるのも同じ意味があります。
横根を作るのは梅雨時期から夏の間に葉面散布するのリン酸・カリです。20年前ならタブーな話でしたが…夏?例年お盆前後にベントは新根を出し始めますので、8月に体内のリン酸濃度を高めてあげることで芽数が増え芽数の低下を抑制させ、夏越しから秋の立ち上がりが良くなります。
ベントの停滞時期には根部からの吸収が弱いのでリン酸一カリ ポイントフォスを土壌に落とさない様に葉面散布(50㏄~80㏄散布)して下さい。土壌に落ちるとカタビラのエサになってしまいます。秋の横根を作る為には夏場から準備して下さい。
地球温暖化や気候変動により近年9月の気温が高くなり管理が難しい時期ですので8月のリン酸は非常に有効です。 施肥は日中の散布ではなく、朝のグリーン刈り直後の散布であれば、盛夏であっても焼ける事は少ない。殺菌・殺虫に関しては夜動くので夕方散布が理想的。

根の呼吸?
クリーピングベントグラスの高温ストレス体制の生理的基礎 (ラトガース大学のハン教授の論文より)
①地温が大事 ベントグラスの生育温度は地上部が15~24℃、地下部は10~18℃で、夏は地温の方が影響を受けやすく、地温をいかに下げるか?が重要。
②根は夜呼吸する 根は夜呼吸しており、夜の地温が高いと呼吸量が増える。 →呼吸量が増えるとフルクタンの消費量が増える。=夜冷やした方が良い。また、昼間冷やすよりは、夜冷やす方が簡単。土壌は水分が多いほど冷めにくいので、夕方の散水はより冷えにくくするし病気も動き出す。
③冷やし方 夜冷やすには、夕方から扇風機を回すと、昼間扇風機を回すよりはるかに冷やしやすい。昼間冷やすにはシリンジング。シリンジングは29度を超えたら行う。シリンジングの冷却効果は15~20分=1時間1回が目安。扇風機とシリンジングの併用はより効果的。5~8度下げる。この時の風はグリーン直接当てるより、表面に滞留する空気を動かすように回すのが良い。

【決め手は硝酸抑制】
成長調整剤(plant growth regulator PGR剤) がありますが、PGR剤を使うと1つの株に6枚~10枚以上の葉がついてしまう奇形児を作ってしまいます。基本3枚あれば十分ですので芝生の綺麗な形にはなりません。PGR剤は使い方が上手い方も居ますが、タイミングを逸したり止めたりすると節間が徒長してしまい、軸刈りの原因となります。継続使用しないと効果も安定しません。冬場にも節間が短く下葉が落ちずに残った芝は芽数があるようにみえますが、実際は芽数が少なく寝ているので、葉や茎が痛みやすくなります。病害が発生した時など回復の遅れ等の不安材料も残ります。夏場のリスクを回避する為には硝酸抑制剤G’s-suppresserがお勧めです。梅雨から夏に地温の上昇により硝酸化細菌が働きだし、アンモニア→亜硝酸→硝酸へと変化し、硝酸は-イオンに帯電するために土壌に吸着されずに芝生体内に水と共に強制的取り込まれてしまいます。光合成で作られる糖の生産を超える硝酸は、窒素同化できず(アミノ酸やタンパク質になれない)軟弱徒長・ スカルピング (軸刈)を起こし負のスパイラルに入りやすくなります。

【土壌と芝生を切り離しシンプルに考える】
日本とアメリカとの違いとして少量散布があげられます。アメリカのゴルフ場では水を買っている為、薬肥料代よりも水の方が高いコースが多くあります。一方日本では水は無料との認識があり、散布の考え方も多水量が当たり前でした。農薬の登録も多水量登録が一般的です。
アメリカでは少量散布が一般的で40cc散布もTOROのMulti Pro1750が有れば簡単に散布できます。これを利用しない手はありません。
グリーン・Tee・FW・RH全てに使用できる優れものです。憧れの外車ですし!
土壌は-に帯電しているので、+に帯電しているCa・Mg・は土壌に吸着されやすい状態であり、ーに帯電しているリン酸は鉄やマンガン等と結合してしまいます。加里はリーチングしやすく、他の+イオンと結合もしやすい状況です。そこで活躍するのが緩衝体である腐植酸エコゾア腐植元リキッド・フルボ前駆物質リードアップターフなのです。
尿素もリン酸も葉面散布により土壌に落とさず少量散布することで、厄介な土壌吸着を抑えて効率的に芝生に吸収させることができます。肥料は土壌に落とすのか葉面散布するのかを見極めて、土壌と芝生を切り離して考えるとシンプルで効率的になります。
しかし土壌は植物が育つ基礎ですので、土壌分析を踏まえて徐々に土壌改良を行って下さい。サンドグリーンでは完全な土壌団粒化は作れませんが腐植を利用する事により団粒化(物理性の改善)・CECの増大・不可給態肥料の吸収(化学性の改善)が行われ地力が高い土壌環境が生まれます。地力が高い土壌には目に見えない菌も住みやすくなります。生物多様性と言われますが土壌中でも必要で、環境ストレスにも強く芝生の環境作りも大切です。 土壌中の気層面が20%で液層面が60%~70%で気温が25℃の時が最も菌が活発に動く。芝生の根の先端がこの状態を地下15cmに作れれば、ベストな状態を作れる。

【夏場のピンチの時】
 夏場本当に厳しい状況に陥った時には刈込が一番のストレスとなります。グリーン刈りを止めて下さい。
スプリンクラーでの露切りや、グリーンモアの刃を回さずドラムを転がす!2日に1回3日に1回の刈込に切り替えるだけでもストレス軽減となります。
 芝生は煮えてダメになるケースが殆どです。散水過多で根に酸素が届かずに蒸れてベントが煮えてしまいます。乾燥では色が変わりますが、水を与えればベントは復活してきます。
サマーシート等で強い日光を遮断する(防霜用グリーンカバーを浮かせて張る事でも対応可能) 日差しを抑えるだけでベントの色は良くなります。
シリンジングを小まめに行う。土壌に落ちない程度日中の噴霧散水を行う事で葉から水が気化した時に気化熱を奪われ、葉表面温度が下がります。
扇風機をグリーン面に向かって設置してベントに風を入れ蒸れを解消する。最近はレンタル品も見かけます。
・6㎜以下でのムク刃でのエアレーションを 日中作業は避け朝晩の気温が低い時に行う。※但し逆効果になる場合もありますので作業判断は慎重に!
種を撒く。高温期では5日程度で発芽確認できます。播種は必ずスパイキング等で凹凸を付け種を定着しやすくして下さい。
 発芽後は特に小まめな散水を行い、発芽確認できたら1時間おきに散水を行い、根を乾かさない様に注意して下さい。
 3葉期頃にヒドロキシイソキサゾール剤で立ち枯れ予防及び発根促進を行い少しでも播種した種が残る様に観察して下さい。
 秋のお彼岸頃が推奨播種時期です。
・ドリルで土壌を入れ替える。グリーンのたるんで低い場所には、ホールカップを深く2段抜き取りオーガン等で掘り起こし、グリーン基礎の暗渠下
 にある砕石層まで孔を掘り珪砂やボラ土等を下層に入れ出来るだけ粗い砂をその上に乗せ、芝生を戻します。この柱を何本か作る事で、グリーン内
 の排水不良個所や低い場所の改善になります。
・弱ったベントは根から養分を吸収する事は出来ません。 葉面散布で葉の裏にある気孔から活性剤MMサプリブラッドを薄く散布する。
・差し替えを行う。出来れば同じグリーン内の後ろ側のベントを使う事をお勧めします。環境に慣れている芝生は活着も良く馴染みやすくなります。
 ホールカップ又はヘキサゴンや大判を使用して深さを確保して根を動かさない様に移動させます。この時1手間加えて発根促進剤や腐植酸液に
 漬けてから捕植作業を行う事で、活着率は格段に上がります。差し替えも夜温が落ちる秋のお彼岸頃が推奨時期です。

【刈カスを計量しよう】
 芝生は常に成長しています。 刈カスを量を測る癖をつけましょう。刈取量が少なければ葉面散布、刈取量が多ければ散布しない。健康管理のバロメーターです。人間の感覚ではわかりますが、記録を残し何が起きているかを理解する事で状態が分かります。ゴルフ場では20面近くの違った環境でベントグラスは育っています。個々の特徴や条件もつかむ事で20面均一したパッティングクオリティーを実現できます。
刈カス量は春と秋0.5~1ℓ/100㎡、夏と冬0~0.5ℓ/100㎡を目安にしてください。

夏から秋…ベントグリーンの管理
 お盆を境にして台風や雷や秋雨前線が出来始め、少しだけ涼しい風が吹き始める頃に、ベントグラスは白い根を出し始めます。この時期になると日照時間も短くなり始め、グリーン表面が乾きにくくなり、藻の発生が増え始めます。ホールカップの縁の乾き具合を見ながら散水の量を減らす時期です。気象観測計でET値(蒸散率)の推移は注視して下さい。近年9月のお彼岸がその時期なのかもしれません。
 ベント作りは秋から始まります。(ベントと同じムギ類も秋播きです)但し春の様には縦にはさほど根を降ろしませんので横根を作ります。

”百聞は一見に如かず”と言う諺がありますが、グリーンもしかり。良いと言われるコースは見に行った方が良いと思います。
プレーして見てわかる事があるし気づきもあると思います。管理者に話を聞ければもっと最高!昔と違って今の人たちは職人気質ですが包み隠さず何でも話してくれる方が多いと思います。たまにはミシュランガイドの高級レストラン行くと何か感じられると思います。僕は寿司で感動しました!
まずは1つでもチャレンジしてみて下さい。1年に1回しか経験できない管理です。楽に夏越しさせる事でもっと別の気づきが得られると思います。

※肥料用語辞典
「水溶性」は水で溶ける成分「く溶性」はクエン酸3%水溶液で溶ける成分。土壌中でクエン酸3%水溶液の状態を作ることはかなり難しいので実際のところこれらの資材を1回くらい使用しても、急激な化学性の変化は起きない。

参考資料 仕事で関係している島田氏が1年間のベントグリーンと高麗グリーンの根茎調査を行った調査を芝草学会で発表していました。
芝生の動き方と根の生長は参考になると思いますので参考にして下さい。

芝草研究_ベントグラス1

芝草研究_高麗